ワインインポーターとは?起業の現実と成功の鍵
日本人の年間ワイン消費量はこの10年間で増え続けています。
そしてその背景には、海外ワインを日本へ届ける存在があります。
その役割を担っているのが、ワインインポーター(輸入業者)です。
日本の1人当たりワイン消費量は、年間約3リットルに達しました。
この数字は、成熟した洗練された市場を示しています。
日本は、世界第10位のワイン輸入国です。つまり、ワインを日常的に楽しむ文化が定着したと言えるでしょう。
さて、日本国内の消費者が、様々な国や生産地、ブランドのワインを楽しめるのはなぜでしょうか。
それは、ワインインポーターが海外ワインの窓口として機能しているからです。
彼らは、流通全体を支える重要な存在の一つです。
そもそもワインインポーターとは、どのようなものなのでしょうか?
もくじ
ワインインポーターとはどんな仕事?
ワインインポーターの主な業務内容と責務
ワインインポーターとは、海外のワイナリーからワインを仕入れ、日本へ輸入する業者のことです。
酒販店やレストランなどの業務店、そして一般消費者にワインを届ける役割を担っています。
一般的にワインインポーターの仕事には、いくつかの主要な責務があります。
以下に代表的な業務内容を紹介します。
主な業務内容は次の通りです。
- 海外ワイナリーとのコミュニケーション
- 海外ワイナリーへの注文書の発信・転送と代金支払
- 直接または貨物運送業者を通じた、海外ワイナリーから船便または航空便による輸送手配
- 日本国内にワインが到着した際の通関手続き
- 税関から入港地近くの保税倉庫への輸送手配
- 倉庫でのワインの保管
- 業務店や小売店に販売する卸売業者の選択
- ブランドの宣伝と販売の支援
海外ワイナリー代理店としてのワインインポーターは、各ブランドの日本での流通を管理します。
どのように流通させるかについて、多くの決定権を持っています。
ワインインポーターの種類と規模の違い
大手インポーターの役割と責任
現在、国内では250近くのワインインポーターと流通業者が携わっています。
数が多いため、ワインインポーターは、大手商社から個人企業レベルまで様々な規模で営まれています。
今まではヨーロッパが中心で旧世界と言われる生産地のワインの輸入が標準的でした。
独立系インポーターの強みと広がり
近年は、ソムリエや小売業者が注目する新しい産地も増えました。
ヨーロッパ以外の「新世界」と呼ばれる地域のワインに価値を見出し、それらを扱う小規模な独立系輸入業者が急増しています。
私たちメローネも、イタリア・ロンバルディア州のフランチャコルタという地域に特化しています。
小規模ながらも、独立系のワインインポーターとして活動しています。
ワインが好きな方は、好みのブドウ品種を覚えたり、好きな生産地を探したりします。
お気に入りのワイン生産者を見つける楽しみもあります。
しかし、世界中には数えきれないほど多くの生産者が存在します。
その中からどのワインを選ぶかは、とても難しい課題です。
ブドウ品種や生産地を知っているだけでは、実は当たり外れが大きいのです。
そんな中で「これだ!」と思える美味しいワインを見つけるにはコツがあります。
それは、「ワインインポーターで選ぶ」「お気に入りのインポーターを見つける」という視点です。
美味しいワインを保つには、どんな状態で日本に届くかが非常に重要です。
現地輸送、海上輸送、国内配送、倉庫保管などの考え方がインポーターごとに異なるため、コンディションは大きく左右されます。
どのインポーターが輸入したワインかを知る方法があります。
最も簡単なのは、ワインボトル裏のバックラベルにある輸入会社名を確認することです。
輸送中に温度変化で劣化したワインは、二度と元には戻りません。
そのため、どのインポーターが輸入しているかを確認することが、品質を見極める大切なポイントです。
最近では、インポーターが自らレストランやアンテナショップを運営する例も増えています。
それにより、個々のインポーター名の認知が少しずつ広がっています。
ワインインポーターは本来、裏方の仕事です。
しかし近年は、さまざまなインポーターが登場したことで、この職業自体にも注目が集まっています。
ワイン好きならば、ワインのインポーターを起業してみたいと思う方もおられるかもしれません。
まず、ワインインポーターとして起業するには、まず経験が必要です。
大手商社やインポーター、酒販店で働きながら、海外ワイナリーや生産地との信頼関係を築きます。
そして資金を整え、独立するのが一般的です。
ワインインポーターの成り立ちはさまざまです。
私たちメローネは、大手商社や酒販店に勤めた経験はなく、完全な未経験から起業した独立系インポーターです。
当社のワインインポーターとしての成り立ちとしては、かなり異質ではありますが、大阪・泉州でフランチャコルタ専門のインポーターをスタートアップして5年(2019年現在)。
大阪府最南端(おそらく)でワインインポーターを起業した、その経緯を知っていただければ幸いです。
私がワインインポーターを起業した理由
ワイン輸入を志したきっかけと大阪での起業背景

私は、もともと歴史地理や旅が好きです。
生まれ故郷である大阪府和泉市に所在した旧和泉国の国府についての歴史地理を研究して地元に貢献したいという想いがあり、関西大学の文学部へ進学しました。
海外体験がもたらした転機
進学後の1997年。外国との交流をしたいと思い、地元・和泉市の国際姉妹都市学生交流事業に応募しました。
アメリカ北部のミネソタ州、ミネアポリス・セントポール近郊のブルーミントン市でホームステイする機会を得ました。
私は交流団長に推挙され、代表として仲間をまとめました。
現地の市長や市議団に表敬訪問を行い、交流の先頭に立つ経験をしました。
その結果、拙い英語でも意味が通じれば伝わるという貴重な学びを得ました。

さて、ホームステイ先には、私と同じ年の息子がおり、彼はインターネットのネットワークエンジニアとして活躍し始めていました。
高校時代からMSXという初心者向けのパソコンで簡単なプログラムを作ったり、大学進学後は個人のウェブサイトを公開して、コンピュータやインターネットは興味がある分野でした。
日本から遠く離れたアメリカで、自分のウェブサイトを見ることができた驚きと、彼からの刺激を受けて、これからはインターネットの時代が来ると強く思い、システムエンジニアの道を歩もうと決心。

大学から依頼を受け、関大の公式ウェブサイト制作を担当しました。
この経験を経て、卒業後は大手IT企業に入社しました。
システムエンジニアは、システム設計書を作ったり、プログラムを書くイメージがありますが、私の場合は少し違いました。
ITアウトソーシングという部門に配属され、入社後の約17年間で携わった仕事は、コンピュータシステムの移行と運用というもの。
ITアウトソーシングの移行と運用という仕事は・・・
- ある企業の事務所にあるサーバなどの精密機器群(売上や顧客データ、知的財産など、企業の生命線に関わる情報のやりとりをするサーバや、記録装置、ネットワーク機器類)を
- 耐震・免震設備や発電設備などが備わり、関係者以外は立ち入りができないという安心・安全な場所に
丸ごと引っ越しして、その後の面倒を見ましょうというサービスです。
要するに、A地点に置いてある機器が危ないから、安全なB地点に機器を移して、ちゃんと見てあげますよというものです。
そのサービスが一気に注目されたのが、2011年の東日本大震災。東日本大震災をきっかけに、ITアウトソーシングの仕事が急増しました。
その結果、深夜2〜3時にトラブル対応をする生活が続き、心身の限界を感じるようになりました。
今までは、大型連休やお盆、年末年始のお休みを利用して機器類の引っ越しをしていたため、半年単位のビジネスフレームワークでやっていました。
しかし、需要の急増に仕事の枠組みが追い付かないまま、3カ月や1.5ヶ月という短納期でやり切る仕事が入るようになると、終電や間際の時刻に退社するようなサイクルに。
帰宅後、寝ているさなかの真夜中の2時や3時にでもトラブル電話がかかってきたら即対応せざるを得ないというような仕事をしていると、日中の仕事でミスも起きやすくなり、忙しさも相まって対処も後手後手に陥る悪循環。
イタリア現地で学んだワインインポートの原点
湖畔のオステリアで心を取り戻す
2012年の秋ごろから心身に異常をきたしはじめてきました。そして、遂には医師の診断により長期療養が必要となりました。それが2013年4月。
張りつめていた緊張の糸がプツッと切れたのか、療養を始めた当初は、何もする気が起きず、ベッドから起き上がることもできませんでした。
1か月半ほどして少し動けるようになった頃、弟から「イタリアに来てみたら?」と誘いを受けました。

弟の一言が転機に
大自然に囲まれた場所で何も考えずゆっくり過ごせるなら、それだけでも気分転換になるかなと思い、フランチャコルタの街・イゼオで過ごすことに。

湖岸の街イゼオで過ごすうち、心に少しずつ変化が生まれました。
弟がオーナーを務めるオステリア「メローネ」での時間が、私を癒してくれました。
フランチャコルタとの出会いと輸入の決意
オステリアは、夕方から開店。イタリアにはアペリティーボという文化があり、仕事終わりと夕食までの時間にひと息入れるために馴染みの店でワインを1杯愉しむというものがあります。
そのアペリティーボの時間になると、どこからともなく常連の年配の方々がお店にやってきて、ワインを片手に8人~10人ぐらいのにぎやかなテーブルになります。

イタリア語は全く分からない私ですが、本当に楽しそうに話したりしているのを末席で見聞きすると、鈍った心が次第に癒されてくるのが分かるようになりました。

数日もすると顔なじみになり、こちらの事情も分かったようで、英語を話せる方も同席していた日に、ある年配の常連さんからは

人生長い道のりなんだし。
たまたま石につまずいてこけただけ。
傷が癒えたと思えば、また歩き始めればいい。
そんなことがあったから、君と会うことができた。
これは良いことなんだ。
おーい!ワイン入れてあげて。祝杯だ・・・はい。乾杯。

気力も尽き果てて存在価値がないと思っていた日々に、かけてもらった言葉。
そして、1杯のワイン「フランチャコルタ」が沁みた瞬間でした。
プレ・アルプスから吹き込む新鮮な空気のなか、人々の温かさに包まれました。
その環境の中で、次第に気力を取り戻していきました。
ワインのインポーターへの転機
ある日、オステリアのまかない中に話が出ました。
「日本でも美味しいフランチャコルタを広めたい」。
その言葉に、私も強く共感し、賛同しました。
大手のカンティーナ(ワイナリー)は日本に入ってきているけど、小さなカンティーナは日本に入ってきていない。
全く知られていない美味しいカンティーナのフランチャコルタを日本で広めることがイゼオに住んでいる意義だと思う。
という話が持ち上がりました。私自身も日本でフランチャコルタの販売ができれば良いなぁと希望的に思っていたことがありました。
そして、アペリティーボの経験を通して心を打たれたフランチャコルタを日本に紹介できるようになれば、その喜ばしい味わいを日本のみなさんと分かち合えるかと思い、賛成しました。

実はフランチャコルタとの出会いはこの時が初めてでなく、2005年9月の旅行時に生産の中心地・エルブスコで 約40種類のカンティーナが集まるフランチャコルタのフェスティバルが開催されていて、そこで色々のみ比べをしたことがきっかけです。
システムエンジニアがワインのインポーターを起業
美味しいフランチャコルタを日本に輸入しよう!と意気投合したものの、商社や、貿易会社、ワインのインポーター経験はゼロどころか、何の立ち上げもしていない段階。
しかし、ビジネスとしてワインのインポーターを立ち上がるとなると、やることを関係者で共有してもらうための資料が必要です。

ということで、帰国後、事業計画書をパワーポイントで作成しました。
再びイタリアを訪れ、弟の通訳でプレゼンを実施。
その結果、複数のワイナリーから輸入承諾を得ることができました。
弟は現地で10年以上作り手とお付き合いがあるものの、ワインのインポーターとしては全くの未経験です。そんななか1軒から承諾をもらうと、2軒目3軒目と承諾を頂けるようになりました。

いま思うと、何の実務経験や実績もないのに、よく承諾してくれたものだと思います。本当に弟夫婦の尽力に頭がさがります。これでフランチャコルタ輸入の生産者は決まりました。
しかし、ワインを輸入するには酒類販売免許が必要です。
資金や販路、販売経験もなく、まさにゼロからのスタートでした。
当然、資金や販売先の見込み、販路のコネクションもありません。何よりも輸入や卸、小売業としての実務経験が全く無し。
ワインなどの酒類業界や飲食業で働いたことも無いので、進め方も分かりません。本当に何も無いなかでのスタートです。
そうなると進め方は、システムエンジニアの経験をもとにしてプロジェクトと分科会のグループを立ち上げて、完遂する方法です。
各分野の専門家に協力をお願いしました。
会社設立や会計、酒販免許、通関、倉庫、メディアなど、テーマごとに分科会を立ち上げて進めました。
10月から小売と通販の酒販免許取得に向けて本格始動。
差し当っての課題は、酒販実務経験の証明。私自身に酒類販売の実務経験が無いことをどうクリアするか。次に、販路をどうするか。
酒販の実務経験については、申請者本人でなくてもチームのなかで実務経験者がいれば良いというのが分かり、弟夫婦がイタリアでオステリアをしていた際の、ワインの仕入れ明細と店のレシートで実務経験の証明になるかという案が浮上。その内容を税務署に確認すると、OKの返事。必要な部分を翻訳して提出して、実務経験の課題を何とかクリア。
4ヶ月後の1月22日。大小の課題はありましたが、何とか小売と通販の酒販免許を同時取得。誕生日が1月23日なので、1日早い誕生日プレゼントになりました。
1月24日から、早速フランチャコルタ輸入に向けて手配を開始。
船便は2ヶ月を要するので、第1便は、航空便を選択。
しかし、運悪くヨーロッパは記録的大寒波による豪雪で交通網が完全ストップ。
2月5日ぐらいから徐々に動き出しましたが、国際航空貨物が滞留している状態。
ミラノ・マルペンサ空港~関西空港は2日~3日あれば届くのですが、いつ運べるか不明という事態が発生。これは待つしか方法がありません。
2月18日。ようやくミラノから飛び立つことが分かり、2月20日に関西空港着。
全てが初めてのことですが、通関書類の不明点は全て対応したはず。不具合があればやり直しが発生することで、対応日数分だけ遅れます。不備が無いことを一心に祈ったのが良かったのか、翌2月21日には無事通関が通りました。
大阪・東梅田に実店舗の設立-日本初フランチャコルタ専門店の誕生-
2つ目の課題であったワインの販売先をどうするか。まずは、日本では全くの無名であるフランチャコルタという、スパークリングワイン自体を知って頂き楽しんで頂く場所が必要であろうということで 「大阪にフランチャコルタの専門店を出そう」というのが1つの答え。

実店舗の設立は、弟夫婦に一任。2013年12月から探し始めた店舗物件は、大阪の曾根崎で焼き鳥屋さんだった居抜き店舗が見つかり、2014年1月31日に契約。2月からの開店に向けて、手直しと改装が始まりました。
住所は曾根崎というキタを代表する地名であるものの、現地をご存じの方もおられるかと思いますが、契約した実店舗は兎我野や太融寺に近接した、かなり怪しい場所でした。
弟夫婦がホームセンターなどに出向き、外壁のペンキ塗りや内装など自ら改装して、怪しい現地には似つかわしくないオシャレなお店に仕上がりました。
2014年2月21日に無事通関が通ったため、開店日は翌週火曜日の2月25日と決まりました。日本初フランチャコルタ専門店の誕生です。


開店したはよいものの、最初は「フランチャコルタ?聞いたことも無い」という状態だったのですが、地道にフランチャコルタを知って頂く取り組みをしていると、次第に日本初のフランチャコルタ専門店として知られてくるようになりました。
なお、おかげさまで現在は、旧店舗からわずか5分足らずではありますが、西天満4丁目という、大阪の中でも屈指のグルメタウンに移転し、多くのお客様に喜んで頂いております。

ワインインポーターとして何も知らない営業
3月はお店の本格的なスタートとネットショップ関係に時間を費やし、4月から東京で業務販売の営業することに。
しかし、銀座のあるお店に出向いて営業したところ、「掛け率はいくらですか?」と尋ねられ、掛け率って何ですか?それは?「じゃロットは?」え?ロット?みたいな話になり、冷や汗たらたら。当然、お引き取りくださいという流れ。今思えば当然の失敗ですが、掛け率は仕切率、ロットはバッチと同じような意味で、業界が違うとあらためて何も知らないことに気づきました。
そんなことを繰り返しながら営業活動をしていると、行くべきところが少しずつずつ分かってきました。
当社のワインを飲んだ方から「メローネさんの扱っているワインは、名前やブランドなどの知名度とか、値段が安いからと言って飲むワインじゃなくて、ソムリエとかシェフが初めて飲んで純粋に美味しいと、その時のあがった気持ちを知ってもらいたいと思って、お客さんに薦めるワインですね。それと、ワインがお料理の最後の味付けだと理解をしているレストランさんに向いているワインですね。」という評価をいただきました。
メローネで扱う商品数や本数がまだ限られているので、主に飲食店さん向けに営業しています。既に酒屋さんが入っているお店も多いのため、ご要望に応じて柔軟に対応しています。
システムエンジニア経験が活きるワインインポーターの品質管理
リーファー輸送と品質保持の重要性
ワインの品質管理は非常に重要なのですが、当社は異分野からの参入だからこそ、インポーター業界の品質管理に対する考え方の枠組みを外して考えることができたのかもしれません。
私は、精密機器の移行と運用というプロジェクトを17年間携わってきました。
ワイン輸送への応用とリスク対策
この仕事は、精密機器をA地点からB地点まで限られた時間内に
1.温度 2.湿度 が限りなく一定であること
3.衝撃 4.耐荷重 が限りなく小さい状態であること
が求められます。
それらのストレスがないようにプロジェクトをまとめ、タイムスケジュールで各段取りの線表を引き、指示・仕掛けをします。

私たちは、ワインのインポーターとしての業務経験がゼロなので、ワインの国際輸送においての輸送の方法や、品質管理をどのようにするかを考えることからはじめました。
イタリア現地で素晴らしい優れたフランチャコルタに出会っても、現地から日本までの輸送や国内での保管に問題があれば、現地の味わいそのものを、みなさまにお届け出来ないと考えております。現地の味わいをそのままお届けするには、輸送や保管において、最大限の配慮が必要です。
結果として、システムエンジニア経験で培った精密機器輸送の知見をワインの国際輸送に応用すれば、高い品質は間違いなく担保できると見出しました。
ワインインポーター業界から見れば常識外れの部分があるかと思いますが、精密機器の輸送や保管と同じシビアな品質管理レベルであれば、ワインの輸入や保管においても良いコンディションが保てるという考えに至りました。
生産者からの引き渡しは、通常、現地出航港となりますが、メローネでは、生産者100%蔵出しであることはもちろん、生産者現地ワイナリーにて引き渡しを完了します。

ワインインポーターとしてのフェイルセーフ設計

そして、私たちの品質管理のもと、現地輸送から海上輸送、国内倉庫に至るまで100%リーファー便(定温冷蔵コンテナ)で輸送します。
なお、イタリア生産者現地引き渡し時は、コンテナ閉扉にあわせて封印し、日本国内倉庫到着時に、封印されていることを目視確認します。

さらに、コンテナ内の温度変化を抑える工夫もしています。
最大積載の7割、約3,600本にとどめ、空気対流を確保して均一な温湿度を保っています。

これは、輸送中の冷気・空気対流を考慮しているためです。コンテナ内の荷積みの高さを最大7割程度、本数換算で約3,600本にすることで、充分な空間を設けて冷気・空気対流させることにより、均一な温湿度を確保し、特定箇所の温度変化や急激な温度変化が起きないようにしています。
このようにしているのは、信頼性設計の1つであるフェイルセーフ設計を採用しています。
冷却装置が万一停止しても、コンテナ全体がクーラーボックスのように機能し、ワインの劣化を防ぎます。
また、それらが実現できているかを現地ワイナリー出発時点から、日本国内の定温倉庫まで温度計で計測しています。
積み込み・積み替えの際、物理的に電源が切れる場合を除いて、14℃~15℃の範囲内で収まっているので、 理想的な環境でワインが輸送されていることが分かるかと思います。

現在、輸送は、ワインを始めとする飲用目的の液体貨物輸送に定評あるJFヒレブラント社さん、保管は、阪南倉庫さんという南大阪では最古参・大正年間創業で長年の倉庫管理ノウハウをもつ倉庫会社さんと手を組み、定温倉庫に保管しています。
「理想的な環境でワインを保存管理する」というのもインポーターとして重要な仕事の1つです。
日本ソムリエ協会 により、ワインの保管・熟成において理想的な保存条件が示されています。
理想的な保存条件:
- 温度: 12~15℃
- 湿度: 70~75%
湿度は、継続して75%以上になった場合、ラベルにカビが発生します。
このため湿度の上限を75%、コルクが乾燥して縮み、ワインの酸化を促すのが50%以下と言われています。
一般的には60%までは許容範囲としています。

メローネでは、これらのことがきちんと実現できているかどうか、閾値(しきいち:境目となる値=限界値)を下記に定めて、デジテル温湿度計で定期的に測定し、品質管理をしてます。
温湿度計も破損した場合を考慮し、冗長構成(2台)で測定しています。
あまり表に出てこない事柄ではありますが、ワインがどのような状態であるかを記録することで見える化し、監視しております。
- 温度: 12~15℃
- 湿度: 60~75%
最近4か月の測定結果は下記です。


外気温の上昇変化が大きい春先から夏前にかけての期間です。
- 測定期間: 2019/03/18 17:00 ~ 2019/07/19 12:00
- 測定頻度: 1時間に1回
- サンプリング数: 2,948件
- 温度 平均値 14.1℃
- 湿度 平均値 71%
このことから、温度・湿度ともに理想的な環境でワインが保存管理されていることが分かるかと思います。
これらのことが実現できて初めて現地の味わいそのままをお届けすることができます。
大阪南部・和泉市でワインインポート事業を行う意味
ワインインポーターの物流と地理的優位性
和泉市は、港湾・空港・倉庫に近い立地です。
輸送距離が短いため、ワインに負担をかけず、品質を維持しやすいという地理的な強みがあります。
地域社会と共に歩むワインインポートの形
輸入の港湾施設である関西空港と大阪港は、和泉市から車で30分。
泉大津にある定温倉庫も10分のため、何かあればすぐ確認できるという恵まれた環境にあります。
また、港湾施設の中間地点に定温倉庫があり、各施設から倉庫までも約30分程度。高速道路・阪神高速湾岸線で直結していることで、路面の起伏や信号待ちによる揺れも小さく、近距離によってワインに負担をかけることなく、輸入後の国内輸送環境も大きな問題は無いことです。
これらにより、国際から国内のワイン輸送、輸送と保管は、シームレス(継ぎ目なく)で可能になり、各拠点に近接していることから、ワイン品質の安定性が保たれます。
自然派ワインインポーターとしての挑戦
資格取得と専門性の深化
長期療養の甲斐もあり、無事に職場復帰ができた後、しばらくの間は弟夫婦を中心に運営してもらってましたが、ワインのインポーター事業をより良くするために会社を退職して独立。
様々な経緯があって現在に至りますが、もしフランチャコルタに出会わなかったら、会社を辞めることもありませんでした。もちろん、ワインのインポーターを始めることもありませんでした。

ワインの知識やインポーター業界・仕事のことを何も知らないという状態で、ワインインポーターを起業しました。
しかし、経営者としてはワインのことをもっと知っておきたいという思いで、2018年3月から一般社団法人 日本ソムリエ協会のソムリエ資格試験に挑戦。
ソムリエ試験勉強を始めて、様々なご支援を頂きながら何とか10ヶ月でソムリエ資格試験にストレート合格することができました。
この過程で本当に役に立ったのは、大学時代に地理を専攻していたこと。大学時代は好きで地理を専攻してましたが、20数年を経てワインの仕事をするうえでこれほど役に立つとは思いもしませんでした。
よくよく考えてみれば、ワインの原料であるブドウは農作物。当たり前のことですが、ブドウ栽培においては、生産国や地域の地勢、気候条件や土壌などの自然環境に左右されます。
それらは全て自然地理の範囲なので、ソムリエ資格試験勉強をするうえで頭に入りやすく、「地理は生活するうえで役に立つ学問だから、勉強すれば全てに応用が利く」という担当教授の言葉を実感しました。
そして、フランチャコルタの生産地と、他の生産地と比較対象ができるようになったことで、より現地の様子を詳しく知ることができ、お伝えできるようになりました。

かつて私の弟がフランチャコルタの街イゼオで営んでいたオステリア・メローネ。

仕事が終わって家に帰るまでの夕暮れのひと時。毎日、お客さんが三々五々集まってきては、初めて出会う人でも老若男女問わずおしゃべりとワイン楽しむアペリティーボというイタリア文化が存在していました。

日々、アペリティーボの時間にふれるなかで、心が渇いて辛いことをそっと受け止めてくれる夫婦さんがいたり、祝い歌うおじいさんがいたりすると、次第に心が解きほぐれてきました。

その想いを受け継ぐために、インポーターとしての屋号も「メローネ」として掲げています。

今後のミッションと想い
私にとって、フランチャコルタは特別な存在です。
心を解きほぐし、人の優しさと喜びを分かち合えるワインです。
優しさがあふれる地域の人たちと喜びを分かち合うワイン。
だったのです。
私たちは、ワインを販売することではありません。
お食事の時間をもっと楽しく、華やかにすることが使命です。
そして、笑顔と会話がはずむ暮らしを支えたいと考えています。
これからも、失敗と挑戦を続けていくことで、フランチャコルタでつながるみなさまがワクワクするような、新しい価値を創造していきます。